私が消滅する前に
狩心

まず、状況説明として < 荒れ果てた大地 > がそこにある

意味の分からない言葉が浮かび上がり、目の前の現実を覆い隠す
目は白目をむき、美しい妻が私の肩を揺さぶっている間に、それは始まる

黒い点が見える それが広がっていく 
そして 体全体 食われるように 包み込まれる
――――――――――――――――――>>>>>
原点回帰 42年の歳月 ですわよ園の庭 奥 奥
土の中に埋める金塊 あの人の保険金 さえずり 靴擦れ
今日は子供の笑顔いっぱい 運動会の音 脇の下に汗
塀のすぐ裏 あの人の呻き声 掻き消される 
増えていく脳の皺 卵の殻 散乱する竹の子 コガネムシの大群
掻き毟った髪 人間とは思えない顔 とるむろむらてろり
テンテン てんてん ちこぼうや ぐへへ ぺちゃ
校庭を横切る浮遊体 落ち葉 誰も気付かない昼下がり

午後六時のチャイムと共に 消滅する子供達 戸惑う親達
雨雲が ちろりちろり ぽつぽつ 
雨の中 石焼き芋がやってくる 

満月の惑星 満潮の海 
女がひとりフタリ三角関係で沈んでいく アスファルトの中
豆撒きが始まる 集まる小鳥 ベランダの白い布団 太陽に突き刺された
ズズー ずず ずずずずず 下水が詰まるように 引き摺られていく肉の箱
香水の香りの上 山積みにされた人々 多重人格と戦う現代人
子供心 箱詰めにされていく キィたった てろりあん 泥棒の快感 
消えた人 向かわせる儚さ 紙で出来たお菓子の家 先駆け
交差点に行き交う 一輪車と三輪車 季節はずれの風鈴の音
ばびさ わびさび これきじょい からっきし 時が満ちた
劇場から飛び出す大量の弁当とオマル 冬を越す為のロウソク
オマルに跨り排泄行為をしながら ぬるり ぬめりけ ぬきさし
忍び足 荒れ狂う 整わない設備の悪態 巨大なゴキブリホイホイの笑い

ハッピーな心 きっと届くよ 雨の雫を絡めた蜘蛛の巣
何はともあれ工場の私腹 夢 マタタビ 足長おじさんの守護霊
揺るがす 途方もなく真紅 美しいほどのシンクロ太刀

りゅーわーかぁぁ やぁぁげぇられたー みーさんだーきーみー
とーてーとーらん きにーそーにーたーもーれーつーにーはー 成仏
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
取り戻す光、汗だく状態のまま、自分の名前を連呼する
自己を保つのが精一杯で、いつも意識は解き明かされない
毎日毎日、一つ一つの物語にお経を上げ、成仏させて行く
しかし、人物は増えるばかりで収拾がつかない

目が痛くなる程の強い光、吹き飛ばされる眼球
――――――――――――――――――>>>>>
ふらり 現れた男
揺るがない立て看板
書道家の手に握られている飴と鞭
人々の心を呼び覚ました看板!
うねる魔力があり のっそり のっそりと
消えては家路につく 愛欲の彼方から来た死者
はらわた煮え繰り返った
刺されたのは、お前か!
朝は来ない 風が吹けば棒に当たる
棒が叫べば 骨に響き しゅわり しゅわりと
飛び出す炭酸飲料に 頭が上がらない

オーメンオーメン 心の奥底からオーメン
笑われたって仕方がないだろう オーメン

( そして 女が口を開く )

肌色の服を脱がせて下さい もう嫌なんです
肉付きのイイわたしをカレー粉花火って呼ばないで
攻めてくる石畳のダンゴムシはわたしのお父さん
三郎は次郎じゃなくて良かったよ
次郎はママのサンダルでしょう?
あたまがいたいの 股の奥底もハタメイテいるし 
近所の坂はエベレストで エジソンはもう死んだから 傍迷惑で
日本人は十人しか居ないから ビジネスマンには成れないの
あうーんわうーん わたしは媒体
演技できたら苦労しないわ

超人って餅つきが上手なの 同じ物ばかり何度も何度も叩くの
単純な誕生日は来ないわ ほんとごめんなさい
わたしの腸とあなたの腸を結んで ナイアガラの滝を見に行こう?
どぶ川スキーしたいなー アジアン魂ぃぃぃ 
わたしは割れ目 晴れ時々マングローブの湿地帯 
牛乳は今日も元気に 現生かつぐ〜 あらヨット
わたしは太郎〜 わたしはオンナ〜
はぁ 有言実行 どでかメロンパン 10円で売ってケロ
わたしはあなたを疲れさせるのが得意 永遠に続くよ
我先にと陸上部員 合体合宿合唱 あんだーかんだー カーマスートラ
はみ出しゴリラの人工授精に早く捕まってちょーだい 
赤青ぐんじょ色 女医 正子 良子 イラマツだー えんやーこらせー 
あんまんたら ひーんわりきん とーめんちり? ぬたー 
アンゴラ遺跡に着いた 家まだ? 
わたしに心を返して下さい・・・
●△●△●△●
闇に挟まれて、二等辺三角形の光
穏やかになる心、吐き出された何か

私には、私の知らない記憶がある
私は、沢山の私と戦って来た
おそらく、それが原因なのだろう

そして、私の肩を揺さぶってくれている妻の姿が消える
記憶と現実が交錯する、意識が遠のいて行く
そうか、もう、交代の時間か・・・
( 本当に良かった、いつもいつも思っていたんだ )
( 交代はまだか、新しい名前はまだかと )
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
ああ、今すぐにでも僕はもう、電子レンジで「チン!」されて
心臓が裏返って、何もかも剥き出しになって
ポタポタと流れ落ちる血液を、見て見ぬ振りしながら
五感を失って忘却されていくから、永遠に死ぬ事が出来ない!
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
  V
  V
  V
  V  
俺は誰だ・・・

今までの俺が誰だったのかは知らんが
俺が < 殺人鬼の宿命を背負っている > という事実だけは
この文章を見れば 明らかだ


自由詩 私が消滅する前に Copyright 狩心 2006-08-03 04:24:49
notebook Home 戻る