クマのぬいぐるみ
海月

車の中で二人は眠り続け
伸びる陽射しが顔に掛かり
眩しくて目が覚める

波音が耳の奥の方で響いて
君の声は擦れて聴こえずらい

本当に少しだけ優しくなれたら
傷付けずに同じ道を歩めたのだろう

最後にキスをしたのは―――
―――思い出せない記憶の奥底

煙草の苦い味が心を黒く染めて
視野が狭まり君のことを見えなくなって
守るべき人も解らずに君を傷付ける

頬を伝う涙を海に帰せば
君に少しだけ近づけるだろう
と、思いを募らせて
自暴自棄の中で君の事を思い出す

助手席には君は座っていない
今は君が置いて行った
クマのぬいぐるみ

そっと、海に帰すのは―――
―――忘れるべき過去の出来事


自由詩 クマのぬいぐるみ Copyright 海月 2006-08-01 21:51:54
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