アクアダイバー
モリマサ公

濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも


やるかやられるかみたいな
やるのかやらないのかみたいな未来
よく聞け
ここはもう今じゃない
未来
よく聞け
ここはもう過去だ








わたしは
とてもひとりでさみしい
どこからきてどこにいくのかわからない
知りたい
空はどこまでを空と呼ぶのか
知りたい
なにが本当の事なのか



おれは生きているのがとてもこわい
毎朝起きるたびに誰かを殺してしまいそうなめまいがする
服がきまらない髪がきまらない
くつひもをゆわくのに歯を食いしばる
おれたちは誰かのように選択する
頭がいたい
ギャップ
ユニクロ
無印
スティーシー
エクストララージ
ルイビトン
プラダ
誰かのように選択する
どれにしよう
あのこも
あんたも
どのせなかもおなじにみえる
頭がいたい




植物を育てたい
とてもさみしい
ホームセンターで買ったベランダの土
埋める事のなかったたくさんの種
とてもこわい
埋めてみたい
芽が出ても枯れるかもしれない
ひとりぼっちだ
このまま誰にもわからないように
いなくなりたい




砂のようなものがあたまのなかにながれこんでくる
みんな同じ顔をして街中で同じことをいっている
聞こえる
テレビがさらに同じことをいって
今度は同じ顔でみんな
違う事をいってる
さっきとちがう
不安だ
どこかで間違えたのかもしれない
誰も信じられない




濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも



飼いならされてまるまるとした悲しみや痛みや孤独が鼻を鳴らして近づいてくる
餌をまき散らすたびに群れがおしよせて
てのひらから大切なものが奪われついばまれ
「わたしがいないとこいつだめなんだ」みたいにしてつがう手や足
よこたわる砂糖まみれのやさしさのかたまり状態がぶよぶよしている
そんなふうにさみしさはなんとなくどこかへまぎれていく

アスパルテームみたいなノンカロリーの愛情がママから子供たちへ
どんどん注ぎ込まれていく世界中の先進国で


屋根のある家にねむる武器商人の家族が聞くタタタという音
妹にかけてやる毛布の一枚もここにはない
ひとかけらのパンもない
一滴の水もない
小さくなっていく産声
そういうふうにしてわれわれは無感動になっていく

動物である事をやめたいなんておこがましさで
過去の傷をいつまでなめてくらすつもりだ
根のはえたカビみたいなトラウマから
雨期のキノコみたいに成長するマイナスな思考でするバットトリップ
くらやみへダイブする友達を抱きしめる
交錯する現状
そんな腐っちまった希望なんて捨てちまいな
こころなんかこれからいくらでもかわるし
希望なんて掃いて捨てるほどいくらでもわくから
そんな見当違いな足場にはいつまでもいすわるな
ゼロから何度でも組み直しな

やるかやられるか

やるのかやらないのかみたいに遠い未来
のぞきこむ

やるかやられるか
やるのかやらないのかみたいに近い未来
のぞきこむ
自分の声がする
どうだ?
やるか
どうした?
やらねえのか





濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも




















自由詩 アクアダイバー Copyright モリマサ公 2006-07-31 20:26:46
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