夢の架け橋
明日殻笑子

水銀が染みでて狭い空のせいで
ここは今にも崩れおちそうなのですが
きれいに舗装された道の真ん中に
ま白いチョークで丸を描く

チョークの白い粉は毒であるから
すぐに洗いながしなさいと教わりましたが
毒であると知って使わせていたのは
あなたなりのしつけなのでしょうか

敷きつめられた十八の丸は
濃くてあつい紺によく映えて
お隣りのお隣りまでも足早に通りすぎて
十何往復の間に陽が暮れていて
うすい出汁だしの匂いと母が
二秒遅れで私を呼ぶ声をあげて
排気のとどかぬ路地では素直でいられました
ずっと夜のまま明けないなんてことが
あることを知らなかった
あの頃


きれいに舗装された道の真ん中に
ま白いチョークで描くは夢
夢であったのです
架け橋であったのです
知らぬ間に太陽が昇って
またも水銀立ちこめる空にむかうための


けん


けん










自由詩 夢の架け橋 Copyright 明日殻笑子 2006-07-31 01:41:58
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