気づき
中村猫彦

夕暮れ、
遠いほうから、
なつかしい風と、
鈴の音が聞こえた

まずは左手をかけ、
それから右手をかけ、
首の根元を、
きつくしぼり、
左手がほどけ、
右手がほどけ、
首の根元がやわらかくとけて

夜明け前で、
ある
アメリカのミニマリズム作家の小説の主人公のように、
私は
目を覚まして、起きて、外の
玄関の外の
門に出ていって
そこに
ひどくうらぶれた私が
固いコンクリの上に
立っていた
彼が
何か言いたげに
口を閉ざした


自由詩 気づき Copyright 中村猫彦 2006-07-27 11:59:57
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