剥製
暗闇れもん
ある日喉に針が刺さり私は歌を歌えなくなった
青空を見上げて風に乗せて自由に空を飛び
あの青々とした木々のどれかで羽を休め
あなたのためだけに歌を歌うのが好きだった
私の声はあなたをくすぐって
あなたの声は私をくすぐって
そんな私達は耳障りだったのかなといまではそう思う
その時は私の見るものはあなたばかりで
私が歌うのはあなたへの愛の歌で
そればかりで
ただ幸せで
私の喉に針が刺さり私はあなたを呼べなくなった
私の針は私の羽までも連れ去り私はあなたに触れられなくなった
涙を流すこともできない剥製になって
ガラスの瞳で
ずっと曇りガラスの向こうを見つめ
あなたが私を呼ぶ声が別の誰かを呼ぶ声に変わっていく日々を
そんな日々を
無いはずの声で否定し続けた
見苦しいくらいに
目が覚めたわたしは貴方の腕の中に居た
何もこのことを知らない貴方は、しがみついたわたしに不思議そうに笑いかけた