剥製
暗闇れもん

ある日喉に針が刺さり私は歌を歌えなくなった

青空を見上げて風に乗せて自由に空を飛び
あの青々とした木々のどれかで羽を休め
あなたのためだけに歌を歌うのが好きだった

私の声はあなたをくすぐって

あなたの声は私をくすぐって

そんな私達は耳障りだったのかなといまではそう思う

その時は私の見るものはあなたばかりで
私が歌うのはあなたへの愛の歌で
そればかりで
ただ幸せで

私の喉に針が刺さり私はあなたを呼べなくなった
私の針は私の羽までも連れ去り私はあなたに触れられなくなった

涙を流すこともできない剥製になって
ガラスの瞳で
ずっと曇りガラスの向こうを見つめ
あなたが私を呼ぶ声が別の誰かを呼ぶ声に変わっていく日々を

そんな日々を
無いはずの声で否定し続けた
見苦しいくらいに



目が覚めたわたしは貴方の腕の中に居た
何もこのことを知らない貴方は、しがみついたわたしに不思議そうに笑いかけた





自由詩 剥製 Copyright 暗闇れもん 2006-07-24 23:59:51
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