＃５１

　こんなにもたやすく
　上がったり下がったり
　きもちというやつは
　まったく忙しいよ



＃５２

　夏の終わりの頃に
　誰もがぼんやりと抱く郷愁は
　どこかしら旅の終わりの感慨に似ている
　きっと夏というのは
　移りゆく四季のひとつではなく
　ひとつの場所のようなものなのだ



＃５３

　....hat:A:螺cade * hat:A:螺cade * now....
　....我 * classic * Luck2 * 奈良zarli.....
　....Ziiiiiiiiiト * 手ヲmill..............



＃５４

　アンドロメダを腕輪にする魔法を覚えて
　彼女にプレゼントしようと思って

　とりあえず暇さえあれば
　プラネタリウムに通ってる
　
　だけどいっこうに
　そんな魔法は教えてくれないんだよ

　どうやらあのプラネタリウムには
　魔法使いはいないようだね



＃５５

　闇の裏側は
　光ではなく
　もっと
　深く濃い闇

　嘘の裏側は
　真実ではなく
　もっと
　黒く醜い嘘



＃５６

　もしも
　人間以外のいきものに
　生まれ変わるとしたら
　絶対にシャチがいい

　それがかなわないのなら
　いっそ
　プランクトンとか
　ミジンコにしてください



＃５７

　もう何日も続く土砂降りで
　片側４車線の道路が
　まるで川みたいになっている

　おじいさんが
　歩道橋の上から
　釣糸を垂らしている

　どうですか釣れますか
　いやぁさっぱりですなあ
　そうですかダメですか

　そんな話をしていると
　ググッと手応え
　激しく釣竿がしなる

　３０分近い激闘の末
　おじいさんは
　３トントラックを釣り上げた
　　


＃５８

　コンビニはいつも寂しい

　誰かと行っても
　一人で行っても
　客がいても
　客がいなくても

　コンビニは寂しい場所だ

　コンビニで売っているものは
　ぜんぶ
　寂しい味がする

　ずいぶん前に
　コンビニで買ったおにぎりが
　あまりにも寂しい味だったので
　寂しくて思わず涙が出た
　泣きながら
　寂しい味のおにぎりを食べた

　今でもたまに
　コンビニで買ったものを食べて
　涙をこぼすことがある

　それなのに
　また今日もきっと
　コンビニに行ってしまう

　寂しくなるだけなのに　



＃５９

　犬を
　ちかぢか
　飼うことにした
　という人と
　週末の真夜中に
　ネットでやりとりしていて
　（メッセンジャーってやつだ）
　何気なく
　犬の名前を訊ねてみた

　回線とか
　サーバーとか
　ルーターとか
　そういう
　よく分からないものの中を
　その犬の名前は
　物凄いスピードで駆け抜けて
　突き刺さるように
　モニターに表示された

　インターネットって
　すごいな
　犬の名前も
　くだらないジョークも
　愛のことばも
　来週の約束も
　なにもかもぜんぶ
　矢のようなスピードで
　突き刺してゆく

　この
　小さな唸りを上げて
　光を放つ薄いモニターの
　向こうの
　向こうの
　そのまた向こうの
　また向こうで
　あなたは
　生きているんですよね



＃６０

　ぼくたちは
　しょせん
　霊魂だ

　ふわふわして
　クセになる
　手触りだ

　喉元を
　滑るように落ちる
　気持ち良さだ

　ぜんぶ忘れて
　手を繋ぐ
　あやうさだ

　言葉だけで
　破裂する
　弱々しい霊魂だ