優しい時代
霜天

君の操る必殺技を
よく知らなかったので
不用意に踏み込んで
吹き飛ばされてしまった
それと同じような時代、なのかもしれない

人は満水になると、河へ


誰の肩にも当たらないように夢を見る
深い電車の中で、誰もが眠りに住んでいる
意味がほしくて
続くもののために祈ったり
昨日のことを語り合ったりする
ここでは
誰もが同じように水面を見上げている


やがて君が満水して
何もかもが溢れていく
やがて、河へ
少しでも塞き止めようと手を伸ばすと
誰かが手を繋いでくれる
こんなにも、優しい時代だ


 いつか君のことを誰も知らない時がきて
 誰も吹き飛ばされない日がきたら
 代わりに誰かを吹き飛ばしてやろう
 君の必殺技、のようなもの
 繋ぎとめていけるなら


何も知らないということが
幸せといえる日があるのなら
今はどこまで、辿りつけているのだろう
綺麗な着地
果てのない円運動
人はいつか満水になって
それでも誰かが手を繋いでくれる

こんなにも
こんなにも
優しい時代、だ


自由詩 優しい時代 Copyright 霜天 2006-07-18 00:25:23
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