単純な歴史には時間が掛かる
狩心

父が去っていく 
砂埃が舞い  少しずつ遠い物にしていく 
ずっと見つめ  目の痛み  
湖から立ち昇る幻想 

ああ 父よ ああ 父よ

数ヵ月後に来るはずだった暑すぎた夏
白いシャツ一枚の二人ふらり祭り 
団扇持って歩く  寂れた商店街の先
競馬場の花火大会  失っていく

 *     *     *

成人して初めて訪れた暑すぎた夏 
二人ふらり祭り 黄昏を呼び込む 最初で最後の夏
暗黒の空に昇り行く希望の光 そこから放たれる爆音 
人々の心を貫通していくミサイル
少しずつ 被爆していく

込み上がる思い 伝えられなかった思い
全てアンタにぶつける
それでもアンタは心を閉ざしたまま
受け入れることはない
哀しい後ろ姿の男よ

一つの歴史が終わった

 *     *     *

親の遺伝子を受け継ぐ自分への恐れ
度重なる挫折 回り道して途方に暮れる日々  
諦め掛けていた時に一筋の光 運命の晩婚

時はゆっくりと着実に流れる 血と汗と涙の結晶

背中に乗せる 与えられた小さな命
新しい歴史に 類稀なる愛を誓おう

 *     *     *

憎むべき過去はない
育むべき未来がある

国と国との戦争も 差別問題も
こんな社会は嫌だと嘆く人々も

歴史は あなたから変わっていく


自由詩 単純な歴史には時間が掛かる Copyright 狩心 2006-07-14 10:13:16
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