翠の夏
銀猫

めろんの翠が涼しい頃
強引な若さだけを連れて
新しい部屋を探したわたしが
照れながら甦る

必ずしあわせになるのだと
啖呵を切って
飛び出した古い家
裏付けるものなど何も無く
ただ
獣のような力だけが頼りだった

新しい水は
それはそれは魅力的で厳しく
泣けない涙が汗で流れて


遠くに打ちあがる花火さえ祝福だった
希望以外の全ての感情を
惜しげなく捨てた




白い皿に美しく切っためろんを並べて
安定と穏やかな時間に
宝物を取り替えたわたしは
甘い果汁に酔いながら
眩しくあの夏を見ている

翠だけが永遠で

時はわたしに降り積み
あの頃希望と呼んだものを
昔、と名づけるこころは生まれた

私の周りで
空気はまた翠に染まる


辛うじて
息を潜めている
夏 ふたつ




自由詩 翠の夏 Copyright 銀猫 2006-07-11 15:48:30
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