俄か雨
銀猫

雨雲が熟すのを待てずに
落ちてきた水滴は
過ぎた日の埃の匂いがする

名もなき小鳥が
一斉に声を上げて
巣を目指して羽ばたき
一瞬の喧騒を誘う

今日のわたしには傘がない
誰も此処にいるのを
知りはしない


雨粒の数はみるみる内に
日向の白を消してゆき
髪は
肩は
思い切りびしょ濡れてぬるい

気紛れな俄か雨の
色彩ばかりが濃くなった景色の端を
わたしは濡れた靴を持て余して歩く


切なさが擦れ合って
ぐしゅぐしゅと音を立てている

切なさが擦れ合って
擦れ合って


自由詩 俄か雨 Copyright 銀猫 2006-07-09 23:00:24
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