【短歌祭参加作品】愛のない慈悲なんていらねえよ、夏
たたたろろろろ


「海まではあと2時間はかかるからスイッチをぜんぶOFFにしとくの」


扇風機だせば宇宙人がやってくる黒いかみのけ黄色いはだの

温泉は自宅の風呂とは違うからはだかの歌は真夏の空へ

蝶ので線香花火を見ていなよ上や下から、真横からでも


知恵の輪が外れたような音がして金魚すくいの出店が燃える



「もう少し動かせばどう?ばかみたく蚊取り線香に酔っていないで」


夕立に洗われながら蛇を見る 愛するように恐れるように


風鈴の前でかたぐるまをすれば浴衣の少女は風をあやつる


「コンドームあれで満たしてめいっぱい。川ですいかを冷やしてる間に」


たくさんの女子が冷凍都市の中なけなしの美に毒を込めつつ


シニカルを噛みちぎったら とぶようにお中元を買いに外へ出よう



美しいものだけ見せていたいけど朝のビーチは雄弁な青


宿題がランドセル砲からとびだせば逆光に舞う夏のあれこれ


アイドルのよだれから成るきよらかな水が墓地では大安売りで

夏空の流星群がさりげなく殻を砕いて白身もきみも


うつくしくふけつなことをしていたら花火のおとに驚かされた


少女よ今、半裸で駅の前に立ち全ての線を受け入れる気か


蚊帳のなか誰に見つかることもなくみるみる悪くなってゆく飯



愛のない慈悲なんていらねえよ、夏(市民プールで潜水しながら)









短歌 【短歌祭参加作品】愛のない慈悲なんていらねえよ、夏 Copyright たたたろろろろ 2006-07-09 16:13:16
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