砂漠に雨が
下門鮎子

雨がやまない。青い砂にしみこんでいく。砂
漠の雨は一滴ずつ降る。砂の青は一粒ずつ深
まるばかり。

雨粒は壷にもたまる、そして壷のなかで波に
なる。粒でもあり波でもある光の雨。ぼくは
壷を抱いてかえり、テーブルの上においた。
母さんが肉や野菜を入れて、あたたかい味の
スープを作る。

小さな子どもがひとりで壷をこしらえようと
している。誰にも手伝ってもらえずに。その
子どものところでは雨が降らなくなってしま
った。だから日も照らない。

壷が作れるだけまだいい、それは砂漠に命を
もたらすのだから。ぼくは手が空いていた。
ぼくは子どもの作業を少し手伝った。そうす
ることで雨乞いをし、日乞いをした。


自由詩 砂漠に雨が Copyright 下門鮎子 2006-07-08 23:28:07
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青い砂漠の男