母斑
恋月 ぴの

あのときの金魚生きているよ
あなたと何回挑戦しても
ポイはすぐに破けてしまって
夜店のおじさんが呆れて分けてくれた
小さな二匹の金魚
お口をおちょぼにすぼめた金魚鉢は
ひらひら朝顔のように天を仰いで
金魚藻ゆらゆら踊っている
二匹は大の仲良し
片時も離れ離れにならなくて
(もしかして愛し合っているのかな
指先から零れ落ちるえさを
くちづけでもするように
仲良く食べている
おちょぼの金魚鉢が二匹のすべて
湾曲したガラス越しの世界って
どんな感じに見えるのかな
歪んで見えるのかな
余計なものは聞こえない
見えてこない
(もしかして歪んでいるのは…
マティスの描いた金魚なら
おどけた眼差しをこっちに向けたりして
二匹は大の仲良し
球体の
湾曲したガラス面にうつる
歪んだ世界から
零れ落ちる
わたしたちの忘れてしまいたいものに
そっと甘いくちづけを


自由詩 母斑 Copyright 恋月 ぴの 2006-07-03 06:26:44
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