引き出し
iloha

空っぽの部屋にあいた穴
どうすることもできず
漆黒の淵にむかって
ネズミ除けスプレーを乱射する

重たい空気の隙間には
大海原が広がっているらしい
とろける月が沈む地平に
植物の茂った自転車をこぐ

見上げると
ふさがれた地球の裏側
何もかもはっきりさせることなんて
ぼくにはできない

交錯する電線伝いに
無造作なあなたの匂いが
届けられる

ぼくは願う
あなたが
あなたらしく
回り道で
言葉の壁を超えていくことを

ぼくは
ぼくなりに
粛々と
いのちの構造のあいだを降りていくことにして

道なりの仕事にとりかかろうと
足元にあった
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自由詩 引き出し Copyright iloha 2006-07-01 12:52:09
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