水先案内人-Canopus-
AKiHiCo

誰かが願いを架けた流れ星
零れ落ちる涙は頬を伝い
張り裂けそうな胸を必死に抱きしめて
あの人だけはあの人だけは

祈りを捧げるロザリオ
誰に向けるでもない悲しみは
キミに襲いかかる弾幕のようで
白い部屋で眠るあの人は
今も夢の中を彷徨う旅人の
早くカノープスを見つけて
キミの願いが宿る星を

誰も訪れなくなった部屋に
チューブで繋がれた微かな生命
瞼の裏の世界が知りたくて
キミの手を優しく握れば
思い出すあの日の出来事
蘇る笑顔はもう昔の幻影に
蒼褪めたキミの鼓動
誰か気付いてほしいと
ここに確かに命が在るという事

皆がキミを置き去りにしてゆく
季節はゆっくり流れて
時計の針は確実に廻っている
今度また流れ星を見つけたら
キミの為に願いを捧げて
思い出になる前に
キミが消えてしまわないように
機械で動かされている体躯
内側は確実に毀れつつあると
判っているのに

砕け散った思いが床に転がって
破片が煌いているけれど
それは全て過去の出来事
キミの心はあの日から停止してしまった
約束を交わそう
二人だけの秘密の約束

髪を撫でて頬を撫でて
キミが楽になれるようにとカノープス
身体が時を刻むのを止めれば
心は解き放たれるだろう
願う事はただ一つ
キミが早く自由になれる事

僕が願いを架けた流れ星
叶うのならばあの人に
どうか幸せな結末を投与して




自由詩 水先案内人-Canopus- Copyright AKiHiCo 2006-06-30 03:55:36
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