愛想笑いの逃亡者
松本 卓也

今年に入って何度目かな
人生を通して数えてみれば
百を越えてはいないと思うけど

誰にも告げられないままに
疎外感に打ちのめされた偏屈を
愛想笑いで隠すだけが精一杯だった

嘯いた数の現実が一つずつ心の中で零れ
嗚咽はもう僕自身嫌になるほど繰り返し
それでも口をつく言葉は道化のそれで

誰かに期待されないで生きていけば
誰かに心を預けずに暮らせるのならば
寂しさに慣れる事だってできるはず

そう信じ続ける日々に疲れているから
抱きしめてくれる温もりを買いながら
誤魔化す日々を連綿と繰り返す

否定と拒絶を許容しながら
惰性と恐怖に脅えながら
明日を生きる為に歯を食いしばる
生産性の欠如した時間は無為に過ぎていく

今日また肋骨の隙間から軋んだ痛みが
一瞬だけ鼓動を止めたのを感じたけど
三箱目から取り出した一本に
在るがままの終焉を託していた


自由詩 愛想笑いの逃亡者 Copyright 松本 卓也 2006-06-29 00:58:52
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