バチッとやられた羽蟻
狩心

俺コンビニ入り口付近にある紫色の蛍光灯にバチッとやられた羽蟻
命って一瞬なんだな
煙草吸ってるおっさんその瞬間を見てたけど
おっさんボーっと宙を見つめるばっかりで何のリアクションも無かったな
そんでおっさん俺のこと置いてコンビニ入ってったな
せめて俺の体の痙攣が治まるまで俺のことしっかり見つめて居て欲しかったよ
夜なんだな
俺の心も夜の闇に浸透していくよ
俺コンビニ寄るつもり無かったんだけど
なんか光があったから引き込まれちまっただけなんだよ
やり直してぇよやり直せないのかよ仕方ねぇのかよ
俺は邪魔者扱いなんだな
寂しいよ
悔しいから俺あのおっさんの今夜の夢の中に出没してやろうと思ってるんだよ
そんで紫色の蛍光灯でバチッと一発やってやろうと思ってるんだよ
煙草吸ってたおっさん添加物いっぱい弁当持ってコンビニから出てきたよ
たぶん俺の死に様見て食欲出たんだろうな
もう時間みたいだな
俺はそろそろ逝くよ
悲しい気持ちになった時はコンビニ入り口付近にある紫色の蛍光灯見て
俺のこと思い出してくれよ
でも俺こんな風にぐだぐだしてたらいつの間にか逝けなくなっちまったよ
もしかしたら俺このまま地縛霊にでもなっちまうかもな
そしたら俺の魂ずっと俺をバチッとやったこいつと一緒に居なきゃいけないんだな
だったら今の内から友達になる為に自己紹介しておいた方がいいかもな
俺コンビニ入り口付近にある紫色の蛍光灯にバチッとやられた羽蟻
よろしく
お前は何ていうの何か答えろよ無言なんて卑怯だな
やっぱお前も俺に興味ないんだな
俺に興味ないくせにピカピカって光り出しやがって嘘吐きも程々にしろよ
俺は一体誰とコミュニケーションすればいいんだよ
俺の心はどこへ行くんだよ
空中を舞う自由な羽なんて無かったらこんな事にはならなかったんだな
もしかしたら俺普通の蟻のままだった方が幸せだったのかもしれねぇよ
でも立候補したのは俺だからやっぱ自己責任だよな
俺の横にズラッと俺とよく似たやつらが横になって休んでるな
お前らも疲れたんだな
じゃあ俺と一緒に少し休もうよ
なぁ何か言ってくれよあぁそうかお前ら逝っちまったんだな
でも俺は逝かねぇよまだやり残したことがあるんだよ
ほら見てくれよガクガク震えながらでも俺の後ろ足動くんだよ
まだ希望はあるんだよ立てるかもしれねぇよ
でも他の足が動かねぇよ
それに俺頭が悪いからどうやったらいいか分かんねぇんだよ
もう少し待ってたらもしかしたらまたバチッとして
新しい奴が来るかもしれねぇよ
そいつは俺よりも頭がイイかもしれねぇよ
俺そいつに話し掛けてみるよ
後ろ足しか動かなくなっちまった頭の悪い俺だけど
そいつの話し相手ぐらいにはなれそうだよ
だからその為にも俺はまだ死ねねぇんだよ


自由詩 バチッとやられた羽蟻 Copyright 狩心 2006-06-21 23:55:12
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