三日月の部屋
藤原有絵


世界のありったけの明かりに負けず
その人の背中越しに三日月が見えた

一瞬で長い腕がそれを遮る


活路を見出さなくてはね


しっとりした声で
それはそろりと湖底を撫でるよう


口が肩で塞がって
そっと手のひらを揃えて

夜闇が私の瞼にのっかって
目を閉じる あの瞬間


三日月が滲んだ

夜に消えてしまう

高い塔のてっぺんで


おそろしく 静かな部屋で

ぐしゃりと何かが潰れる音がした


慌てて耳を塞いだら
頭の中で反響して

もう

気が狂いそうだった


月が見ている

月が歪んだ

月が壊れる


そして




暗転


自由詩 三日月の部屋 Copyright 藤原有絵 2006-06-17 05:47:27
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