ずみ
紫翠
ずみの花が咲いた
夜にかくれて ひとつ、またひとつと
ふくらんでは夢のようにひらく優しい花よ
ずみの花が光る
風を香らせ たわわに揺れる
蜜蜂達が 遊ぶ梢に
私も腕を拡げて 飛びたいの
ああ、
花弁
(
かべん
)
に滲んだ
薄紅
(
うすくれない
)
は
煌々
(
きらきら
)
と陽に射しぬかれ 昇華するのか
散る 散る
純白の涙になって
我差し招く
静
(
しずか
)
の森
今ひとときの
響
(
ひびき
)
の森
春蝉がひとつふたつと 死にゆく土に
ひとつ、ふたつと生まれる土に
溶け しみてゆく ずみの涙
自由詩
ずみ
Copyright
紫翠
2006-06-16 22:10:09