銀猫

湿った闇に蛍ちかり
潤んだ夜に星ひかり

小指から糸を辿れば
丁度きみの背のあたり
絡んだ赤が花になる

   夏は夜

浴衣を着れば良かったと
木綿のシャツを少し恨んでみる
盆の踊りの人混みは
俯くわたしに
苦い水が忍び込む


思い出と呼ぶには
まだ痛み
きみの履いていたサンダルを
覚えている

   わたしまだ夏

アセチレンの光眩しく
背を眺むわたしは
ただ夢の綿菓子をはむ


白い爪先なお白く
蛍ちかり  星ひかり
岐れ道を照らしてる

   わたし
   まだあの夏にいる


自由詩Copyright 銀猫 2006-06-13 12:33:01
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