占星術
千波 一也


矢継ぎ早に
新月は降り注ぎ
縫い針がまたひとつ
遠雷に濡れている


吟醸の名を濁さぬ盆は
薬指だけの浸りに あかるい焔を映し
無言の岸辺を満たすのは
衣擦れの波
鈴なりの




風の旋律が過ぎるとき
水の揺らぎは紋様となり
瞳の数だけ姿見は
その透明度を
ただ 募らせてゆく
かくして
碑文は護られる



もみじの錦は 不易の標
こおれる大河の 螺旋の枕
ぬかるむ土に 栄枯の砦
眠れる貝は 星夜の 縮図


四季を奏でる歯車に
刻字は彫りを深くして
その痕跡の石のかけらは
種へと宿り
路傍の随所に
繚乱す





自由詩 占星術 Copyright 千波 一也 2006-06-13 00:15:37
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