マン・イーター
佐々宝砂
単調な電子音。
おまえは誰かと哲学的な質問。
管制塔から?
数字とアルファベットからなる16桁の識別番号が私を示す記号。
であったはず。
である。
HALでないのは確かだ。
春だよとあなたは言う。
その小さな島国の南洋の側は、
いつだってそう寒くはなくて二月半ばの今だって
タンポポが咲いていて、
春という言葉であなたは何を意味するつもりなの。
私の身体から鱗片がはがれおちる。
春だよとあなたは言う。
二月半ば、生き物たちが目を覚ます、
食べなさい、
大地を這うものよ、
私を食べなさい。
血小板、白血球、赤血球、リンパ球、
もろもろの、私の、
部品。
かつて私を構成する細胞であった、
今はゴミ。
乾いてかさかさした。
みんな食べられてしまえ、
みんな。