マン・イーター
佐々宝砂

単調な電子音。
おまえは誰かと哲学的な質問。
管制塔から?

数字とアルファベットからなる16桁の識別番号が私を示す記号。
であったはず。
である。
HALでないのは確かだ。

春だよとあなたは言う。
その小さな島国の南洋の側は、
いつだってそう寒くはなくて二月半ばの今だって
タンポポが咲いていて、
春という言葉であなたは何を意味するつもりなの。

私の身体から鱗片がはがれおちる。

春だよとあなたは言う。
二月半ば、生き物たちが目を覚ます、
食べなさい、
大地を這うものよ、
私を食べなさい。

血小板、白血球、赤血球、リンパ球、
もろもろの、私の、
部品。
かつて私を構成する細胞であった、
今はゴミ。
乾いてかさかさした。

みんな食べられてしまえ、
みんな。


自由詩 マン・イーター Copyright 佐々宝砂 2004-02-21 03:12:37
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