死物
岡部淳太郎

傾いて
その周囲に小さな
豊穣を張り巡らせながら
季節の同調を軽んじてゆく
絵の中の成果
熟れすぎたくだもの
(あるいは くだくもの)
裂かれるために実る
歯のいのちの前でおびえるもの
音楽の
始まりの時のために
めいめいの最も浅い皮の裡で
ふるえながら待つ
ゆらぐ立脚の上で
砂がかすかにくずれるのを感じる
それぞれの
淡い類縁の取り決め
やわらかな器の外にある覚醒
そうしたにぶい転調の中で
じきに
朝がやってくる



(二〇〇六年三月)


自由詩 死物 Copyright 岡部淳太郎 2006-06-01 22:55:34
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