よいしょ・こらしょ・どっこいしょ
宮川三太郎から

あたしが、こうやってうだうだと、
まとまってもいない意見を手軽に公表できるのは、インターネットのおかげなんですね。

で、あたし、ちょっと前まで、インターネットの中にいて、
中ってのは、インターネットをメンテナンスしている人だった、ってことなんだけど
中の人の感覚を言うと、インターネットって大変なことになってるの。

あれよという間に、
インターネットってビジネスインフラになっちゃって、
もうインターネットって止められないわけよ。

インターネットって勝手に作られたものじゃなくて
人間同士が、じゃ、あんたのネットワークとあたしのネットワークをつなぎましょ
みたいなノリで拡大していくネットワークで、
あたりまえだけど、そこに人間が介在してるのね

あたしがインターネットの中にいたときは
そういう仕事もやってて
どんな感じかっていうと

まずは、

「あたしはこういうもんなんだけど
 あんたのネットワークとつながりたいなー」

ってメールするのね。

「いいよ、つながりましょ」

ってことになると、
お互い情報を交換してルータという機械に設定して
ネットワークを接続するの。

これは、昔も今も変わってない、
インターネットが進化した、とか言われても
やることは一緒。

で、もちろん、インターネットってスケールしなきゃメリットがでないから
じゃんじゃんつながることが前提でさ、
別に相手がどんなやつだろうが、

「つながってー」

って言われれば

「いいっすよ」

って言ってたわけですよ、みんな。
でもさ、気がつくと、とんでもないくらい大きくなっちゃって

「もう、正直、無理っす。わけわかんないっす、おれ」

ってのが中の人の感覚。

でさ、スパムとか、P2Pとか、Gyaoとか
あほみたいに帯域を食うのね。

それで

「なんか、ネット、遅くね?」

って言われても、知らんがなですよ。

で、どっかのプロバイダがWinnyをフィルタしようとしたら
政府から通信の中身を見るのは、良くないんじゃないのって
ツッコミが入る始末。

ま、あんたら、それで商売してんでしょ、ぐだぐだ言うなよ

って言われれば、そうなんだけど

インターネットって何でもあり、とか言われると

ちょっとなーって思うのよ。

何でもありなら、何でもありでいいんだけど
インターネットが何でもありなら、遅かれ早かれ、
インターネットは崩壊しますぜ

バラバシという物理学者が
面白いこと言ってて

インターネットってのは、人間が作り上げたものだが
システムとしては自律してしまった
だから、意図的な攻撃に対しては自己復旧する仕組みが
出来ている、

だけども、意図的じゃない攻撃には、からっきし弱いはずだ

ここで言う「意図」ってのはね、

人間の「意図」ね

たとえば、テロリストが、大手町のKDDIのビルを爆破しても
トラフィックは分散されてるから
そんなに大きい影響は出ないだろ、って
つまり、サイバーテロってのは
考えられているより、そんなに脅威じゃないのよね、

じゃ、「意図的じゃない攻撃」ってのは
なにかって言うと

インターネットが、自ら、崩壊しちゃうかもしれない

「いや、もう無理っす、おれ」
って言うかどうかは知らないけどね。

でね、今は、あたし、インターネットの外の人になっちゃったんだけど
中の人にしたら、

インターネットが、勝手に潰れちゃう、なんて

最高のエンディングだと思うのよ
だって、誰にも怒られないしさ、ユーザに謝りに行く必要ないしさ

で、それは、中の人にとって最高のエンディングなだけじゃなくて
毎日、インターネットにアクセスして、
ログインしている

あたしたちにとっても、最高な出来事なんじゃないのかな。

だって、あたしたちって

「インターネットに送信されている」(マクルーハン)んでしょ。


散文(批評随筆小説等) よいしょ・こらしょ・どっこいしょ Copyright 宮川三太郎から 2006-05-31 14:59:31
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