わかるということ(過去作品)
セイミー

しずくを太らせ
響きを太らせ
風そよぐ溶岩洞穴の静脈血のように
水は水を刻み
音は音を刻み
時は流れていく

僕は密かに呼吸していたに違いない
手相が目眩のように
流れるくらがりに佇めば
僕は果てしなく短くなる

眠りとは
一つの泳法なのだろう
青い街を塩のにおいで満たして
クラゲのように溶かしていく
やわらかく
とうとい何かに抱き寄せられて

僕が僕であるために
すべての流れがあるのだと錯覚して
何度も何度も転びながら
僕が僕でないことに気づいていくこと
すべてのわからないものを
わからないままに放置してよいことを
言葉の外側に開いて示すこと
これが僕にはなかなかできない

だから
しずくを太らせ
響きを太らせ
水は水に
音は音に
呼びかけることもなく
ゆっくりと重なり合っていくのだろう





自由詩 わかるということ(過去作品) Copyright セイミー 2006-05-25 22:27:09
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