じゅうななさい
K+A

全てが上手く行っていなかった。

遊び呆けたせいでバイトを親に止められた。再開するために成績を残そうと勉強して勉強して勉強した。
それでもバイトの無くなった時間は大きすぎて、すぐ飽きる勉強なんかで埋めきれはせず、パチンコを覚えた、麻雀はやめられなかった、週に一度は彼女の家に泊まりに行っていた。いつのまにか何も変わらず遊び呆けていた。
煙草を覚えた。

試験が近づいて睡眠時間が平均2時間の生活に突入した。
削られた4時間の睡眠時間は2時間ずつそれぞれ勉強とパチンコに割り当てられた。
それでもここ何年かで一番勉強していた。酒は我慢していた。かわりに煙草が少し強くなった。

試験の答案用紙は今までで一番埋まっていたし、結果が出ると同時にバイトに復帰できると確信していた。
試験の終わったその日、酒を浴びるほど飲んだ。睡眠不足の体にどんどん染み込んでいくアルコールが気持ちよかった。
その夜、警察に保護された。
翌日の夜、店長からの解雇宣告を人伝いで聞いた。

全てが上手く行っていなかった。

収入源を無くした事で麻雀でもパチンコでも負けなくなった。立直後に現物ばかりを切る麻雀は楽しくなくて、それでも財布の中身を増やすために打ちつづけた。
その頃またバイトを増やした彼女と、バイトもせず麻雀とパチンコで生活をしている自分が並んでいるのが凄く惨めで、会わなくなっていった。
勉強もせず、バイトもせず、彼女にも会わない。時間は有り余っていた。余りすぎた時間を煙草で埋めた。イライラして煙草を吸って、煙草が無いとイライラするようになっていた。
そうして、煙草がどんどん強くなっていった。
読んでいる自伝の主人公は都会の中で腐っていくところで、イヤホンの向こうでは声を振り絞って全てが上手く行っていないと歌っていた。同調したけれども、彼らはそれでも今成功している。本と歌の終わりでそれでも希望を持って生きていくと決めた彼らに裏切られた気がしてしまう自分は、失敗作だった。
下腹部周辺に重くドロドロと渦巻く何かを外へ出したかった。吐き出し方が分からず酒を飲むことで気付かないふりをした。自分を傷つけるようなことは出来なくて、相手を無意識に傷つけた。

最低の人間になっていた。


自由詩 じゅうななさい Copyright K+A 2006-05-25 17:25:48
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