いかまほしきは
落合朱美


夜に、わたしは 
はしたないほど口を開けますから 
どうぞそこから私の中に 
入っておいでなさい
 
内側から私を喰い尽くして 
やがて空洞になった私の躰は 
それでもまだぬるま湯ほどの 
ぬくもりはたもちますから 
あなたはそれを着て眠ればいい
 
朝になれば何喰わぬ顔をして 
私を脱ぎ捨てて 
あなたは仕事へ向かえばいい
 
冷酷と陰口を叩かれても 
目の前で泣かれても 
あなたは眉ひとつ動かさずに 
あなたを通せばいいでしょう
 
すこしばかり擦り切れた躰を引き摺って
夜にはまた私の処に戻っておいでなさい 
昼間に影を潜めて再生した私は 
夜にまたあなたに奪われ
 
傷ひとつ無いあなたを仕立て直すための 
果てしなく繰り返される営みは、嗚呼 
これほどの悦びがあるでしょうか 
これほどの快楽があるでしょうか 

なにもかもがはじまる刹那に 触れる
あなたの指先から 零れる 
渦潮に呑み込まれる誉れこそ 
私の生命なのです






自由詩 いかまほしきは Copyright 落合朱美 2006-05-23 23:22:06縦
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