遠洋
霜天

人がまた、遠くからやってきて
自由な姿勢で挨拶を続けている
寒いと言っていたのは、遠い昨日のことで
引き寄せた椅子に浅く座って
遠く、海ばかりを見ている

すすけた額縁から絵を取り外すと
まだうっすらと、新しい
気付かない指の先で
遠く風が吹いて
人がまた、いなくなっているらしい


目を、閉じています
手のひらの感触で、繋がっている体温で
確かめてみたいもの
明るく沈んでいく
世界、と呼べるもの


朝に目覚めて
僕らは挨拶を繰り返す
それはとても自由な姿勢で
(そう、信じたくて)
昨夜無くしたと思っていたものは
いつでも手のひらの中にある
人はまた遠くからやってくるらしい、から


自由詩 遠洋 Copyright 霜天 2006-05-21 01:55:09
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