降り来る言葉 XII
木立 悟


ふと手に触れた夜が
地平線を見せてくれた
幻と幻の間をふちどる
ほんとうのかたちを見せてくれた


水たまりの上に跳ねる言葉を
橋の向こうから見つめるもの
影と影の間のまなざし
遠い朝を聴くまなざし


眠りの雪 眠りの柱
つづく粒 つづく銀
負うものにうつむく翼の枝が
空からの軌跡のかたちに連なっている
雪にかすむ鉄塔を越え
小さく赤く遠去かる手


冷たい痛みを知るときはじめて
降り来るもののかたちを知る
右と左に異なる光の
瞳をつくる小さな小さな
ひとつひとつの淡い混沌
緑と灰の陽 金の葉 蒼の木
ささやき ふるえ 水たまり
跳ねるもの 跳ねるもの
とどまることのない水紋
とどまることのないちからめがけて
降り来るもののかたちを知る


夜から夜へ 夜から朝へ
地平線が流れ着くころ
ちからのかたちはかたちのちからに
強く 弱く ふちどりを変え
小さく赤く歩みゆく手に
戻れない火に微笑みながら
かけらのかたちを抱きしめてゆく
幻と幻の間にひろがる
ほんとうの世界を抱きしめてゆく






自由詩 降り来る言葉 XII Copyright 木立 悟 2004-02-16 01:12:51
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
降り来る言葉