雲の卒業式
湾鶴

洋なし色に 辺りが包まれ
萩焼のカップには
チャイの印香が漂う中
窓辺からは
いつもと同じ風景

いや 今日は
こんもりと茂る葉の代わりに
樹木には 綿雲の実がなり
成熟したそれは
なんとも居心地わるそうに
ふぅふぅとしていた

萩焼を洗い
かるく 時計に目をやり
口笛を吹いて
気づけば
ちれちれの 雲実は
ひとつの塊となり
樹木の上に浮いていた

お別れのとき

母樹を見下ろし
しばし漂ったあと

空へと 帰っていった

すじ雲・いわし雲・うす雲
ひつじ雲・おぼろ雲・雨雲
霧雲・わた雲・入道雲・・・
巣立ったのちは 世間の風に吹かれゆく

雲の木は空を見守り
また枝を伸ばす


自由詩 雲の卒業式 Copyright 湾鶴 2004-02-15 03:39:16
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