それは "こころのやまい" でしょうか
それは神秘の体験と言われますか
誰かにとっての戦慄の黒は
別の誰かのピクニックの黄色ですか
もしもあなたがあなたの皮膚の薄さに驚いて
次元の外にズブズブと潜り込むのならば
それは誰にも解けない鬱のもつれですか
朝起きて歯を磨くネクタイで首を吊る電車に飛び乗る
乗り越して夢を見るタイムカードの表層雪崩を寸前で食い止める
講習を受けることにするが取り敢えずギターの弦を張り替える
27世紀からやって来たアンドロイドを素手で倒し
致命的なタイムパラドックスを哲学的な脚本にすり替える
そうしてあなたは万華鏡の疾風怒涛のただ中に
あなたの 後ろ姿を 確信 する
あなたがうしろ 姿を確 信される
それはやまいですか
階段を降りられないのをリケッチアのせいにしますか
ドアを開けられないことをシンドロームに加えますか
いつまでも身体に合う薬を探しますか
心に適う薬を捜し続けますか
あなたが決して見たことのないはずのあなたの背中
誰にも解けないメランコリアの魔方陣
あなたの真夜中に太陽は搖る揺ると黄道をそれ
新しい3月に破壊の星は魚座に入り
そしてあなたは
あなたを見る
ウィリアム・ウィルソンはそのとき目を見瞠いていましたか
そしてそのときあなたはただ
まぶたをしっかりと閉じていたのではありませんか?
それは あなただったのでは ありませんか?
連作詩『ウィリアム・ウィルソンの肖像』より
Kuri, Kipple : 2002.12.24