沈める寺
石畑由紀子
匂い立つ深緑と
立ちのぼる雲の下で
十日間だけの地上を生き急いだ
蝉が逝く
追いかけっこに夢中になって
境内に滑りこんだ少年達も
盆を過ぎたころ無口になって
夏が逝く
弔いの数だけ
気は高揚し
そしてまた静かに
沈んでゆき
今日も黒い人々が並ぶ
饒舌な沈黙が空気を震わせている
自由詩
沈める寺
Copyright
石畑由紀子
2004-02-13 15:28:57