銀河の海
ベンジャミン

夜はどんなに暗くても
わずかな光を失うことはなく

たとえば混沌を鎮めるために喜怒哀楽があるように
生き物もそうでないものも
みなわずかな明るさを忘れない


銀河に浮かぶ星々は
途方もなく大きな輪を描き
やがて滅ぶまで輝き続ける
その
海の底のような暗闇
あれはきっと深い悲しみなのです

ひとり
私はそんな夢のような記憶に
どうしても耐えられないので
もしも
あれがああで
これがこうならと
やはり夢のようなことを考えて止みません


ふと
私は海と空の境界で
手足を広げながら浮かんでいることに気づきます

あるいはうずくまったままの格好で
沈んでゆくことに身を委ねながら
そこに
もしかしたら安楽というものがあるとしても
私は結局のところ
動く限りの力で泳ごうとするのです


銀河の海は
限りあるものを限りなく繰り返し
限りあるものはその限りを尽し
そして調和するのでしょう

私もまた
その一つに過ぎないのですが
もしも
あれがああで
これがこうならと
考え始めてしまうと
夜はどうしょうもなく長いので
それが明るさを取り戻すまで
悲しみにくれてしまいます

銀河の海は
常にその頭上でわずかな明るさを保っているというのに


たとえば私の涙が還る場所を
そんな銀河の一部にたとえるなら
それが誰の目にも映らぬように祈ります

銀河の海で

限りなく繰り返される
限りあるものすべてのもののために

どうか小さな明かりを求めることを
私に許してくださいますか

それは人の弱さであり
そして同時に強さであることを


この夜空に浮かぶ星々は
知っているでしょうか

それが希望であることを

銀河はその海の底に
映し続けていることを


忘れてはならないと
私は自分に問いかけているのです






自由詩 銀河の海 Copyright ベンジャミン 2006-05-06 03:30:19
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