お話の切れ端
夕凪ここあ

目が覚めても何かと手を繋いでる感覚があった、確かにあの頃は。



拾い集めて繋げた
羽根で決して明日に
辿りつかなかったのは
少し汚れていたせいじゃない


「ひみつ」という言葉を
知ってしまったときに
もう私たちはひみつを
交わせなくなってしまった


砂時計をさかさまにしてみても
昨日に行ってしまった時間は
瓶の中でさえも戻ってこなかった


歌を口ずさんだ
少しだけずれたドレミが
私の見てるせかいに
ぴったりはまった気がした


約束する、という約束を
いつかしていたはずなのに
忘れてしまった
たぶん果たせないままに


私の体温は低いから
朝があまり心地よくない
きっとあなたのあたたかさは
季節というもので出来ている
わけてほしくて 触れた手


楽譜の読み方は忘れてしまった
そのかわりに
あの頃読めなかった漢字も
書けるようになったいつの頃からか



足りないくらいが丁度いい、とパズルは最後の一欠けを残したまま


どこかに消えてしまった欠片を
探す




自由詩 お話の切れ端 Copyright 夕凪ここあ 2006-05-01 22:35:30
notebook Home 戻る