愛娘たちよ、いつか耳をひらいて
佐野権太

こらえても ゆがむくちびる ふるふるふる
うるみ零れる おかっぱの髪

パパあげる 玄関先で 待ちわびて
握り続けた シワシワの春

負けないぞー きいろい声は どこいった
頭ならべて 春のおひるね

しがみつく 足を振り上げ どしんどしん
いつまでできる 愛しきおもさよ

どうしてもと 重ねた紅は はみだせど
草のように踊る 白いえくぼ

覚えたて 「の」しか書けない ノンちゃんの
手紙は似顔絵 裏に「のの」

夕暮れに ソ・・・ミミ、ファ・・・レレと あどけなく
てふてふと舞う キティのぴあの

ふうわりと お湯に浮かべた 白タオル
風船くらげ 我先に、じゅわっ

柔らかく 温風に舞う 洗い髪
このひとときは じっとしていて

髪とかす 君らもいつかは お姫さま
ささくれ畳に 散り急ぐ吾


短歌 愛娘たちよ、いつか耳をひらいて Copyright 佐野権太 2006-04-28 11:28:38
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