ドライウェル
河野宏子

<えいえんに>

わたしずっと退屈していて。

発泡スチロールのカップのなかで干涸びた麺が
戻されるのを待ってる。シールされたフタ。
肉らしき茶色の破片、卵のいろのスポンジ状、
カニ?ねぎ?風味豊かな牛や鶏やポークエキスの
粉末にまみれて、戻されるのを待ってる、

・・・何でできてるの?

目的はとてもはっきりしてる。
戻されて、腹におさまるため。
そのためにわたしとても退屈していて。

<えいえんに><かんせいされない>

遺伝子の、のりもの、わたし
ものすごく、退屈していて、おなかが減るの

眠気の向こう側で日常が過ぎてる。
全部眠気の向こう側で過ぎてる。
「僕はやわらかく死んでいく」って
もうずいぶん前に歌っていた男の子たち。
ハローハローどんぐらい低い?って歌ったのは
カートコバーンで、でもそれは1990年代の
はなしで今はどんぐらいドライ?って、そんな感じ、眠い。

わたし暗室に籠って、ずっと同じ写真を現像してる
今週と先週の月曜日が同じ、
来週と先々週の金曜日もたぶん同じ、
揺らしても鳴らない魂、
戻しても還らない何か、
これはただの写真

お湯かけて、3分間のプログラム、
なんか一応、それらしくはなる

カップヌードルは便利なたべものだよ
わたしたちそうなってくのかな
どう思う人類?
どう思う環境ホルモン?
どう思うクローン羊?
どう思う?
おばあさんの膣は、灰になるまで膣

ドライウェル、ハーッ(乾く音)
ドライウェル、ハーーッ(もっと乾く音)
ドライウェル、ハーーーッ(とても乾いた音)
粉みたく灰になる、もしくはポキポキの、骨になる

<えいえんに><かんせいされない><ばらばらの>
<しろいパズルに><なるやくそくで>

つるつるの骨つぼには、なんでフタがあんのさ?


自由詩 ドライウェル Copyright 河野宏子 2006-04-25 22:29:28
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