足跡のひどく冷えた午後
田島オスカー



言葉の中にいろいろと隠すのが得意だった僕を
何かとおそれていたあの人の まなざし
少しだけでもいいから、といって
色の付いた答えばかりを求めていたので
僕はおそらく 耐えることを忘れようとしていたのでしょう
今では舞うものすべてが敵と言わんばかりの
そうきっと 殺気立ったくちびるをしているに違いない
僕の浅はかさの 人の世に値しないことは
疑うべくもないことなのです

あの人の 舞う耳飾りが美しかったこと
それは真珠ですか、と問うた僕の声の
どうしようもない張り詰めた様子
しかしそれらは何の未来も予想させなかった
きっと その少しの間に漂ったのは
湯気のような弱々しい幸せで
それに溶け込んでしまえなかった僕は
だからこそ何もかもを隠したかったのだと

嗚呼、廃墟のような孤独であろう。

僕のすべてを僕に任せるような顔をしたあの人が
事実任せたつもりでいたあの人 が
僕のすべてをその必死な涙と真珠に隠して
さらっていってしまったのでしょう





 


自由詩 足跡のひどく冷えた午後 Copyright 田島オスカー 2006-04-23 01:56:18
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