今宵小さな星が降る
ベンジャミン
森の寝息が聞こえる夜
小さな生きものの見る夢は
無塵の砂丘にしみこむ雨の
蒼く芽ぶいた花の種
明日を知ることが堅く閉ざされている
明日を知ることの恐れを知っている
今宵小さな星が降る
あたかも希望であるかのような
白く流れる時の砂
さらさ、砂ら沙
すらり、洲ら離
と
今宵小さな星が降る
あたかも綺麗なものであるかのような
涙の色に似たものが
さ、ら、ら
す、ら、ら
ひゅう、る、離
る、る、ら、離
ぽつりアスファルト
黒くにじませる街並み空は
蒼を吸い込んでいる
とても僕らは儚いので
今宵見る夢の破片は
調度そんな
僕らは儚い夢の中で
いくつもの生をめぐり
まるで泡の弾ける音ほどの
哀しみを噛み締めるのです
無塵の砂丘に取り残された
あの花の芽の開かれた
双葉のような幸と不幸を
やがて一輪の散る運命と知りながら
今宵小さな星が降る
窓辺に置かれた明日が目覚め
朝陽が昇るその影に
忘れたままの
あの
さ、ら、沙、ら、離
と
渇いた心に今は
束の間の雨が降っています
今宵
小さな星が
音もなく流れてゆくのを
森も
小さな生きものも
まるで知ることのないままに
夜空は哀しいほど
綺麗に輝いています