今宵小さな星が降る
ベンジャミン


森の寝息が聞こえる夜

小さな生きものの見る夢は
無塵の砂丘にしみこむ雨の
蒼く芽ぶいた花の種


明日を知ることが堅く閉ざされている
明日を知ることの恐れを知っている


今宵小さな星が降る


あたかも希望であるかのような
白く流れる時の砂

さらさ、砂ら沙
すらり、洲ら離




今宵小さな星が降る


あたかも綺麗なものであるかのような
涙の色に似たものが


さ、ら、ら
す、ら、ら

ひゅう、る、離
る、る、ら、離


ぽつりアスファルト
黒くにじませる街並み空は

蒼を吸い込んでいる

とても僕らは儚いので
今宵見る夢の破片は
調度そんな

僕らは儚い夢の中で
いくつもの生をめぐり
まるで泡の弾ける音ほどの
哀しみを噛み締めるのです


無塵の砂丘に取り残された
あの花の芽の開かれた
双葉のような幸と不幸を
やがて一輪の散る運命と知りながら


今宵小さな星が降る


窓辺に置かれた明日が目覚め
朝陽が昇るその影に
忘れたままの

あの


さ、ら、沙、ら、離





渇いた心に今は

束の間の雨が降っています
今宵

小さな星が
音もなく流れてゆくのを

森も
小さな生きものも

まるで知ることのないままに


夜空は哀しいほど
綺麗に輝いています






自由詩 今宵小さな星が降る Copyright ベンジャミン 2006-04-18 03:29:43
notebook Home 戻る