傘をささずに歩く勇気を私はもたない
umineko
雨を避けながら私は歩いている
傘に守られて私は歩いている
円形の
ぽっかり浮かぶその空間で
私は世界を眺めている
雨粒が傘の端から端から
あふれるように流れている
それは本来私の上に
降り注ぐべきものだった
私はいともやすやすと
傘をさして歩いている
それでも
いつのまにか足元が濡れる
いつのまにか腕まで濡れる
上手に避けたはずなのに
どうして
雨を避けながら私は歩いている
見上げた信号はつめたい赤で
足元は小さな洪水になり
みんな逃げ場を探している
探して
哀しみは
たぶんそういうことなんだ
と
唐突に私は気づく
傘をささずに歩く勇気を私はもたない
だけど
雨の中を私は歩く
交差点の向こうが薄くけむって
私は
水たまりをよけながら
濡れてしまうのは仕方ない
仕方ないんだ、と
雨の中を私は歩く
見上げて