神様ミステイク
かなりや

ひどくちいさなくつでした
今朝
うちの庭に落ちていたのは。
我が家には
ぼくと
妻と
ロビンソンしかいませんから
あんなちいさなくつが落ちているなんて
そんな
おかしなこと
あるはずないのでした。
でも
落ちていました。
赤いエナメルの、ワンストラップシューズ
つまさきはきれいな曲線で
つつましいコサージュがついています。
左がわのみ。
妻はそんなひどくちいさなくつを拾い、
泣きました
わたしに子どもができないのを哀れんで、神様が子どもを授けてくれようとしたんだわ
でもきっと神様も不完全だから、失敗してしまったんだわ
子どものくつしかおとせなかったんだわ
でも神様、どうか気に病まないでくださいましね
わたくしたちは今日も元気です。
だからどうかもう、お泣きにならないで。
神様が泣いていることが
どうして彼女にわかったのかはわかりません
でも
いつもは言葉数の少ない妻が空へと叫んだあと
つぶの大きな雨が降ってきたのは本当です
ああ神様泣かないで

あしが宙に浮いてしまったぼくは
念じたのでした。
その日からぼくは
妻の目の奥が見えなくなったようにおもいます
めがねを調整してもらおうかな。
もしかしたら見えていたような気がしていただけかもしれないけど
念のため


自由詩 神様ミステイク Copyright かなりや 2004-02-08 20:48:40
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