他人の空
窪ワタル

夕空を染めたニッポニア・ニッポンを知らない
雲は刻々と変わり稜線が滲む頃
ニッポニア・ニッポンは茶の間へ来た
貨物船に乗せられてたった二羽だけ

ニッポニア・ニッポン達は知らない
自分がたった二羽のうちの一羽で
四つ目の名前を付けられ茶の間で見つめられるのを

テレビが佐渡島の夕空を映す
何も知らないニッポニア・ニッポンに重ねて
世界のニュースを映す
遠くの戦場の少女も
記憶喪失の政治家も
いじめっ子の少年Aも
四角い檻に捕らえられて
もう何処にも行けない

四角い檻の外には誰もいないのだ

気付かずにいる視線の向こうに
幾千億のニッポニア・ニッポンがいる

他人の空は深く広い
ニッポニア・ニッポンはもう羽ばたかない
鼻先にシチューの香りがする
もうすぐ母が ごはんよー と呼ぶのだ




自由詩 他人の空 Copyright 窪ワタル 2006-04-06 15:55:21
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