幸福駅
窪ワタル

真っ白ならそれは
無目的な終点で

切符を破く

錆びたレールがセイタカアマダ草に埋もれて
どこで途切れているのか きっと誰も知らない
幸福駅 という名前の駅に流れ着いた若者は
それでもやがては 髪を切って街に帰って行き
もう忘れてしまった日 死んでしまった時間に
旗を立てるはずだった場所さえも
与えられたものだともう気付いてしまったのだ

背中に続く轍には鍵がかけられていて
誰かに見つけられるのを待っている

人差し指の向こうには幸福駅が初めからあったのだ

改札のない今日が過ぎてゆくので
セイタカアワダチ草のように
静かに揺れてはいられないだけなのだ

翻るのは昔の
長い髪ではない
鍵のかかった轍は続く
遠くで汽笛が鳴る


自由詩 幸福駅 Copyright 窪ワタル 2006-04-01 19:51:06
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