手と手
窪ワタル

とほうにくれるところで
重ならないでいる
身体の温みの底で
遡れない時の残響が笑っている
空のような深い過程が
手と手を結びつける引力ならば
きみとりんごの木の下まで歩いて行って
飼っているサヨナラたちを捨ててしまおう

サヨナラたちは甘く
誘惑の色をしてるから
また飼ってしまうのだけれど
僕は何処までも卑しい生まれなので
今日は黙っていることができる

とほうもない道を歩く
手と手には
鋭いソゲが刺さっている
りんごの木の下まで
なるべく息を乱さずに辿り着いて
根元に言葉を捨てよう
信じるなんて嘘とかわらないよ
救われない手のひらには
二足歩行の罪が寄り添っている




自由詩 手と手 Copyright 窪ワタル 2006-04-04 20:02:41縦
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