yuruiharu
本木はじめ



粒入りのオレンジジュース飲みながらもうやめようと思う煙草は


目を伏せて下唇を噛み締める航海はまだ始まったばかり


ハンガリー舞曲聴きつつ描く絵の少女はとわに止まったままで


妖精の羽音が泉に波紋呼ぶぼくらはどうしてゆめなんだろう


冬空の下でガソリンスタンドのきみの美脚がさらされている


どうしても遅刻できない朝だからタイムマシンの構想を練る


この世界ずっと見つめていたいから丸で囲んだ角膜の二字


永遠に上がることなき遮断機の向こうできみがほほ笑んでいる


降りてきたバスにあなたは乗っていた僕はこのままどこまで行くの?


僕はもう疲れてしまっただからもうサバトは欠席しますせんせい


そっと手を伸ばせばきみの唇がゆっくり「はる」と動く病室


テーブルの下に潜れば脚の森いちばん白い木を抱き眠る


安定を望むゆめみる春風の原に寝転ぶ旅人と猫


枯れた花一輪荒野に在るだけのようなぜつぼうてきな片恋


待ち合わせ場所は深夜の墓地の隅あなたのゆびを掘り出している


いつはりのメトロノームの刻むそのリズムでぼくらずれてゆく春


ビターチョコレート過剰に食べた午後あなたとお茶が飲みたくなるの


ああ、きみが選ぶ緋色のスカートがあらゆる赤の基調を変へる


まばたきを見せて抱きしめ合うよりも深くこころがえぐられるほど


きみはもうぜつぼうてきにうつくしい蝶をころさなければならない


スカートで来てよまばゆい太陽の下でグランドピアノも白い


もうきみは夢にも現れないんだねカボチャ畑で目覚めた朝に


眠そうな目を見開いて何のため生まれてきたかわかろうとして


朝はもうゆびの隙間のひかりなのどうにもできないこともあるから


明け方の闇で見つけるペンしかし今度はノートがゆくえふめいで


噴水は真っ逆さまに空に落ち体験してもいない思いで


明け方の闇で見つけるペンしかし今度はノートがゆくえふめいで


さんがつのとおかになにがあったのかおもいだせないだけどいきてた


ティッシュ箱こまかくやぶって窓辺からばらまくハ ピバ ス テイトゥ ー ユー


交番の前に見事な桜咲きあるいは事故の多発するかも


嗚呼、ギルティ、空に放った長靴が回転しているま昼間の自死


静寂の春の教室たはむてゐるのは生まれたばかりのひかり


闇もまた必要なんだと思う夜まくらの傍にきみあらわれれて








短歌 yuruiharu Copyright 本木はじめ 2006-03-31 05:18:22
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