ノート(午後と柱)
木立 悟





階段にしずくの傷がつらなり
あせた光を流している
そのうちのいくつかが
私とともに上へあがる


雲から水が去ったばかりで
手のひらと屋根は渇いている
空の風より強い風が
またたきの奥に沈んでいる


ざらついた片耳
はらはらとざわめき
しずくの行方
火照りの行方を聴いている


ふたつ去り
ひとつ来る
減りつづけるものを見つめる鏡
無言のまま雲に満ちてゆく


まるみを帯びた影と三角
ふるえとはざま したたりの色
ともに居た光はいつか離れ
音だけが階段をおりてゆく


数え切れない柱があり
数え終えたものから空になった
めぐるもの歩むものたたずむもの
私はそのどれでもなかった


ちぎれた空が道をすぎ
水たまりの上で人になり
すべての透明な境いめに立ち
あたたかくあたたかく身をそらす











自由詩 ノート(午後と柱) Copyright 木立 悟 2006-03-30 17:41:11
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート