啓蟄
湾鶴


針を折るような音が 
遠くで響いたり
単調な反響をくりかえし くりかえして
吹雪が去っていく

そして 
おしよせる
春がじわり地をはい 
足元を湿っぽくさせ

春が舞い
町をくすぐる
初潮をむかえた少女のような
なまなましい 華やぐにはまだ早い香り


新しい光を
全身くまなく受けようともがく感覚
桜がきっちりと締められた帯をとくように
はらりと蕾をゆるめ 光のなかへと溶解していく
また夢を雨へとかえて
世界は映す 冬の自慰





自由詩 啓蟄 Copyright 湾鶴 2006-03-26 23:38:19
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