すぎゆく
砂木



風邪と言われて点滴 二本している時
熱で体中が痛くて でも 身動きとれなくて

イラクで 公園で爆弾を拾って
拾った爆弾がさらに炸裂して 
体中に くい込んだ女の子と
横たわる我が娘の前で
助けて下さいと 泣き崩れている父親 思い出し

何ひとつとして わかっていない自分が みえる

お骨を拾ってくださいと 火葬場で
拾うのは はじめてではないけど その白いものが 
義母が かあさんと 言っていた人で
緊張して 骨壷に 移して

十代の息子さんをバイク事故で亡くした方が
二人も亡くした方が
現実に 白いお骨を拾って 移して
輝かしいペン・ネームを捨ててしまった事 思い出し

何もみえないくらいの透明な重み 自分は 受け止め切れない

どこからも 幸せには 程遠いと思い
でも 不幸ばかりではないと 身構え
やっと とっているバランス

虚しくなるだけの やさしいもの
悲しくなるだけの 明るいもの

それでも 刃向かう事だけが
憎しみだけが 慰めというわけでもなくて
憎しみだけが 慰めであった だとしても

サッカー場を お墓にされて
それでも 頑張ったイラクのサッカーチームは
いろんな宗派の方達だときいた

爆撃された後 たとえオリンピックの花火だとしても
私は 赦せるんだろうか
うっとりとみとれた スケートの演技があったとしても

なにも知らないことばかりに気づく
もう 昨日のままでは いられないんだ

もう 繰言を 繰り返す事 やめて


自由詩 すぎゆく Copyright 砂木 2006-03-19 16:54:52
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