幼年期の終わり
キリヱ

欲しかった物がひとつ

縁日で買ったラムネ瓶の中で
からから回るビー玉
何度も取り出そうとしたけれど
出来る筈もなく
ただ瓶を透かし見ては
溜め息一つ

割ってしまえば手に入るのに
何故だかそれは出来ないまま

今はもう
縁日には行かなくなり
あのビー玉を欲しいとは
思わなくなった

買った物がひとつ

青い螢石フローライトの丸いピアス
ビー玉に似た丸玉は
あの日のラムネ瓶と同じ色
透かして見た景色が
きらきら光る

炭酸水のように弾ける都会を
歩く私の耳許で
ゆらゆら揺れる懐かしい思い出





自由詩 幼年期の終わり Copyright キリヱ 2006-03-18 21:29:22
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