ゼニゴケ
チアーヌ

ふと気がついたら
わきの下にゼニゴケが生えていた
不快だけど放っておいた
ゼニゴケにだって生きる権利があるはずだ
そう思って耐えようとした
すると何日かして
あごの下にも
乳房の下にも
びっしり
ゼニゴケが生えてきた
やっぱり
嫌になった
わたしは必死に掻き毟り
ゼニゴケを引き剥がそうとした
そうすると
胞子が飛んで
体中にゼニゴケが生え出した
もう服なんか着ていられない
下着も取り裸になって体中を掻き毟る
体の裏にも表にもびっしり
髪の毛の中にもびっしり
陰部の奥にもびっしり
毟っても毟っても
毟りきれやしない
そうだゼニゴケは日当たりの良いところがきらいだ
そうだそういうところで日光浴でもすればいい
そう思いついて久しぶりに外に出たが
どこもかしこも日陰ばかり
日のあたる巨大なビルは高すぎて
わたしには登れそうもない
勇気を出して行ってみると
エレベーターは一基だけ
番人はずっと笑い続けている
ゼニゴケの生えたわたしは臆病者で
とてもそこへ行き「エレベーターに乗せてください」と
言えない
ああ
登りたいなあ
爪で必死にゼニゴケをぐじゅぐじゅとはがしながら
わたしは裸のままで昼なお暗いビルの谷間にしゃがみ込む
足を大きく開き陰部の奥まで指先を突っ込み
ぐじゅぐじゅぐじゅぐちゅっぐちゅっと音を立てゼニゴケを剥がす
緑色の汁が股間から流れ出しそこにまたゼニゴケが生える
息を吸い
息を吐き
ああなんて嫌なんだろう
ゼニゴケがこんなに嫌なものだということがどうして
最初のときにわからなかったのだろうか
ああ嫌だ
嫌で嫌でしょうがない
股の間から緑色の汁が流れる
途方に暮れてわたしは獣のような唸り声を漏らす






自由詩 ゼニゴケ Copyright チアーヌ 2006-03-15 22:12:05
notebook Home 戻る